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勢いが止まらない!Raspberry Piの最新情報と海外トレンド
公開日:2019/09/26
■Raspberry Pi 4 Model B 海外ユーザーの反応と高機能の実態に迫る
高まるプログラミング熱、そして電子工作の相棒として「Raspberry Pi」を手元に置いている人も多いかと思います。2019年6月末、そんなファンの注目を集めたニュースがありました。それは、英国Raspberry Pi財団が従来モデル「Raspberry Pi3 Model B+」のアップグレード製品として「Raspberry Pi 4 Model B」を発表したことです。BCM2711を搭載しプロセッサの処理性能は2~4倍に、I/Oのブラッシュアップにより50%以上の高速化を実現。メモリは従来モデルの最大で4倍とされており、USB Type-Cポートも実装し映像出力性能も向上しているといいます。
日本では2019年9月現在、電波法に基づく技術基準適合証明の取得が完了次第の販売予定とされていて、国内販売許可を首を長くして待つファンも多いのではないでしょうか。
(出所:mythic beasts, Raspberry Pi 4 with PoE mounting points already attached.)
気になるRaspberry Pi4 Model B。性能向上の結果、どのようなことができるようになったのでしょうか。一足早く発売された海外では「シングルボードのゴールドスタンダードだ!」「まさに今買うべきミニコンピュータ」「プロセッサー、RAMの進化がすごい」とファンたちが熱狂している様子がうかがえます。
ハードウェアレビューで知られているTom’s HARDWAREの記事(以下抜粋)によると
- ホストサーバーとしての性能向上
- 映像のアウトプット性能の向上
- 機械学習のインターフェース性能の向上 の3つが強調されています。
●ホストサーバーとしての性能向上
安価に手に入れられるRaspberry Piですが、あなどることなかれ。さらなるCPUとI/O改善によってRaspberry Piをホストサーバーとして利用する際の性能も向上しました。1秒あたりの処理性能は、40%近く向上しています。
これによってより重いウェブページや訪問者の多いサイトの基盤運営も実施できるようになりました。
(出所:Tom’s HARDWARE)
●映像のアウトプット性能の向上
映像出力に関しては大幅な改善がありました。Dual micro HDMIポート対応、4K動画のアウトプットも可能となった点が評価されています。
この結果、Raspberry Pi 4 Model Bから二画面(モニター)出力ができるようになりました。OS ・ソフトウェア側の最適化は今後の課題として残りますが1920pix×1080pixかそれ以下であればドラマなどの長編動画(記事ではAvenger’s Endgameが例に上がっています)も問題なく視聴できるそうです。
●機械学習のインターフェース性能の向上
Raspberry Pi 4 Model Bを手に入れたら挑戦してみたいこととして機械学習を挙げる方は多いのではないでしょうか。
今回のモデルチェンジによって、高速性、正確性の向上、検出精度の向上が実現し「機械学習の実装」が具現化しました。これまでもRaspberry PiをUART接続したり、湿度・温度センサーと連携するなどIoTテーマで電子工作、プログラミングを楽しむことができましたが、今回Google TensorFlowやOpenCVとの接続もできるようになり画像解析や物体認識がリアルタイムで処理できるようになりました。画像を使った顔認識など想像力に任せて、一層幅広い用途での活用が期待できます。
このように販売当初は「ICT教育用、プログラミング用・電子工作部品」という意味合いが強かったRaspberry Piですが、低価格そして高性能な特徴からホストコンピュータ、機械学習にまでその活用の裾野が広がっているのは確かです。その市場のニーズに応えるように積極的なモデルチェンジが行われているのも人気の理由なのかもしれません。
さて、Raspberry Piに大きな期待を持っているのは個人だけではありません。研究機関、企業から注目されるRaspberry Piの活用法をご紹介しましょう。
■Raspberry Piがスーパーコンピューターに?米国・Oracle社の発表にみる「開発の意義」とは
2019年8月30日、神戸市、理化学研究所計算科学研究センターのスーパーコンピュータ「京」が7年間の歴史に幕を下ろしたという話題が記憶に新しい人も多いのではないでしょうか。開発中の2009年には民主党政権下の事業仕分けの際、蓮舫氏に「なぜ世界一を目指すのか、二位ではだめなのか」という指摘を受けたこともありました。世界最速のスーパーコンピュータを目指した京は国家予算にして、1100億円がつぎ込まれたことをご存じでしょうか。
理化学研究所は次世代のスーパーコンピュータを「富岳」と名付けて2021年にも運用を始める予定だといいます。
しかし、実際のところ日本のスーパーコンピュータは米国、そして中国の高性能機器に勝てず世界的な地位は低迷しているといいます。
多額な金額を投資して長い時間をかけてハードウェア開発を行う時代は終焉を迎え、最新技術の開発スピードに合わせたより柔軟なスーパーコンピューター開発が求められているのかもしれません。近年、安価なRaspberry Piで並列処理をさせることでスーパーコンピュータを作るという試みが行われてきましたが、それもこのような時代の流れのひとつといえるでしょう。
近年はAI,そして量子コンピューティング(Quantum Computing)の活用が実用化されており、今後より大量のデータの演算処理が必要になることは明らかです。
スーパーコンピュータはご存知の通り、大量のCPUで並列処理をすることで高速性能を実現します。複数台のマシンを連結させるクラスタリングという手法です。つまり、安価なコンピュータでタスクを並列的に同時に実行することで理論上、低予算でスーパーコンピュータを製造することができるというわけなのです。
数年前から、個人、研究機関で試験的に、Raspberry Piを使った「スーパーコンピュータ」の製造が始まっています。2017年の発表によると、米国・ロスアラモス国立研究所(LANL)が、750個のRaspberry Piで構成されるスーパーコンピュータのテストベッドの導入に成功しました。Raspberry Piを活用することで開発の初期費用が抑えられるだけではなく、電力消費量を抑えられるという点も魅力的だといいます。しかし2017年以降、同研究所からの具体的なアップデートはなく、この他にも世界各国でRaspberry Piによるスーパーコンピュータ試作的な取り組みが続くばかりでした。
そしてついに2019年9月IT大手米国・Oracle社が1,060台のRaspberry Pi3 Model Bで商用スーパーコンピュータ発表をし、大きな話題を集めています。これは現時点ではRaspberry Piを活用した「世界最大のスーパーコンピュータ」であると称されています。この製品はスペアノードを含むため実質、1,060台以下での運用ができ、4,240コアに相当する処理能力を有しています。価格は約$37,100(371万円)程度とのことです。Oracle CloudやOracle Exadataを含むデータ基盤、バックアップマシン等、一連の”Oracle Engineered Systems”の運用基盤となっている「Autonomous Linux」で実装されます。
しかし、実際に金融機関や政府関係機関などの基幹システムとしてこのような「Raspberry Piスパコン」が導入されることは考えにくいでしょう。いくらデータセンター初期費用、維持費用が高いからとはいえ、互換性、堅牢性の観点からすぐにこのような製品が後継機器の選定対象になることは難しいのではないでしょうか。
それではなぜデータベース、ハードウェア製品の老舗がこのような開発に力を注ぐのでしょう?
ひとつの考え方にはなりますが、このような発表は、顧客に改めて「適材適所のデータ管理」の必要性を投げかける狙いがあるとも考えられます。
「スーパーコンピュータ」という大規模投資が当たり前な分野で、安価で電力消費も少ない機器が技術的に実現可能であることを示したOracle社。これまで当然のように構えていたデータセンターはこのままでいいのか。クラウド環境を含めたハイブリッドなデータセンター構築の可能性は?本当に堅牢性が必要なデータのみ処理をオンプレミスで実現したらどうなるか?…経営層、IT部に問いかける重要なフラッグシップになるのかもしれません。
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